建設的な会話のために意識すること
こんにちは、CX事業本部デザインチームの小峰です。
前回、「ただ話す」をご紹介する記事を書きました。
再掲するとこのようなステップになります。
大規模なグループで何年も働き、複数チームにまたがる調整テクニックを数多く観察した結果、最も上手くいきそうなテクニックを発見しました。手順は次の通りです。
(1)あなたは、チームBとの”調整が必要”なことに気づきます。
(2)立ち上がって、
(3)チームBのところに歩いて行き、
(4)「やぁ、話し合おうよ!」と言います。
一瞬冗談かと思われかねないものですが、とても重要です。
ただし、このステップは話しかけに行く過程についてのみ言及されています。
「やぁ、話し合おうよ!」とは言った後どうすればよいのか?
今回は「ただ話す」という行為がより建設的なものとなるように、そのヒントを2つ紹介します。
問題解決の5階層
かみ合わない議論をなるべく避けるため、「問題解決の5階層」をよく意識しています。これを最初に知ったのは紹介されている記事をいくつか見つけたからですが、それら記事を見るに、どうやら榊巻亮さんの書籍で紹介されたもののようです。
そういえば書籍は読んだことがなかったので、後で買って読んでみます。
さて、かみ合わない議論はけっこう色々な場面で発生しているのではないでしょうか。
- 色々と話し合っているのになぜか平行線な気がする
- 抽象的な話が多く具体の話が少ない
- 一応次にやることは決まったけどなんだかモヤモヤする
複数の人数が集まった会議でこれが発生することは割けたいです。10人集まって1時間議論したとした場合、かかった時間の合計は10時間。1人が1日かけて何かできる時間です。時間は効率的に使いたいですよね。
「問題解決の5階層」はその名の通り5層構造になっています。
第1階層「事象」
事実として何が起こっているのか。システムの稼働状況、業務状況や内容がどうなっているのか。顧客、エンドユーザー、従業員がどんな状況になっているのか。客観的に何が起こっているかを示す事実です。人の主観は入りません。
第2階層「課題」
事実から見い出せる課題です。解決したいと思うことです。ここから主観が入ってきます。
第3階層「原因」
事実と、そこから得られた課題を踏まえ、そもそもなぜそれが発生しているのかを探る層です。何か背景や理由があるはずです。
第4階層「施策」
課題を解決して目指したい姿や状況に近づけるための対応策です。「事象」「課題」のみで打ち手を探ることもゼロではありませんが、大半の場合において「原因」も踏まえた施策でなければ有効性は落ちるでしょう。かつ、目指したい姿も明確にしておきたいところです。
第5階層「効果」
施策を実施することはコストが掛かります。誰かが考えたり、資料をつくったり、会話したり、コードを書いたりなど人的コストはもちろん、何らかの道具や仕組みの導入といった金銭的コストであることもあるでしょう。また、100%うまくいくとは限らずリスクを伴うことも考えられます。費用対効果を考え、効果を見定める必要があります。
この5階層で重要なポイントは「下の階層で認識が一致していない場合、上の階層では認識がズレる」ということです。これがかみ合わない議論の原因のひとつです。
かみ合わない議論
例を挙げてみましょう。とある開発現場での、チームリーダーとエンジニアのやりとりです。
2人の中で何かがズレています。
動作のスピードといった品質を追求することは当然ですが悪いことではありません。特にシステム開発に携わっている人々であれば必然的な流れでしょう。しかしここに「新人さんのプルリク」という事実が加わっています。
つまりこの状況は、
- チームリーダーは育成を「課題」とみなし聞いている
- 新人の育成のための行動が行われていないという「事象」を見ている
- シニアエンジニアは品質を「課題」とみなし行動している
- システムの品質が下がっているという「事象」を見ている
というズレです。
これを認識することで、それぞれの「事象」と「課題」についてその上の階層「原因」「施策」「効果」を議論することができます。このままだと議論がなかなか噛み合いそうにないことが想像できます。
何らかの調整が必要と考えた場合、自分なりの「想像」や「仮説」など何か考えがあることが多いでしょう。そしてそれを相手に伝えたい。しかし、それを押し付けるだけでは議論にはなりませんし、議論に必要な全ての事象を把握できているとは限りません。そのため、問題解決の5階層を参考に「事象」から探るのは良いアプローチであり、認識の統一や合意形成に向けてスムーズ化が図れると考えています。
というわけで、相手が何を考え重要視しているかを探る必要があります。そこから自身が把握できていなかった「事象」や「課題」が見つかり、より建設的な議論につなげることが可能になります。
そのためにはもうひとつのテクニックとして「傾聴」を意識できると良いでしょう。
傾聴で相手を探る
傾聴はコーチングや上司と部下の1on1といった文脈でよく出てきます。ですが、対等な関係性であっても有効な考え方です。アクティブリスニングという呼ばれ方もしますね。
簡単に言えば、自分のことは一旦置いておき、相手のために、五感を総動員して話を聞くことが傾聴です。
これには3段階のレベルがあるそうです。実質傾聴できていないレベル1から、目指すべきレベル3まであります。
レベル1:内的傾聴
これは実質、相手のための傾聴にはなっていない段階です。内的という言葉が示すように相手ではなく自分に焦点が当たっている状態です。
つまり「どうやって自分の考えを伝えようか」「教えたいことをいつ言うか」といった考えをしながら相手の話を聞いている状態です。
相手をなんとかしようとするあまり、自分の考えや解決策を押し付けてしまう危険性があり、話の進め方も自分の持っている答えへの誘導的なものにながちです。
自身が内的傾聴とならないように配慮し、相手側を内的傾聴へ促すことが必要です。
レベル2:集中的傾聴
相手に焦点を当てて集中して聞いている状態がレベル2です。本来の傾聴はここからでしょう。相手の言葉だけでなく、声の調子、間の取り方、感情の変化なども注意深く探ります。この状態になると、自身が相手への興味関心、好奇心が自然と高まり、次々と相手に寄り添った会話が進むようになります。
テクニックの一つとして「沈黙」があります。シーンとした空気を恐れず、相手の発言を待つのも手です。そして相手が話し始めたときに動作やあいづちできちんと聞いていることをアピールします。自身の考えを伝えるような発言を差し込むのは控えましょう。
相手のための時間であるという認識が重要です。自分のことは一旦置いておきましょう。
レベル3:全方位的傾聴
最終段階です。自分と相手のみならず、周囲にも気を配って感じ取れる状態です。明るさ気温、周辺の雰囲気など取り巻く環境に注意を払って総合的に把握して会話を進めるようなイメージです。身も蓋もない言い方ですが「空気を読んでいる」状態と言っても差し支えないかもしれません。
ここまで来ると完全に集中できていて、感覚が研ぎ澄まされ直感が働くようになってきます。
レベル1と2を意識しよう
おわかりだと思いますがレベル3に至るのは難しいです。それは一旦置いておいて、レベル1と2に注目すれば十分でしょう。内的傾聴と集中的傾聴を意識し、自分が内的傾聴に陥っていないか、自身が集中的傾聴を行い相手の内的傾聴を促すことができているか、といった辺りに気を配ることで、隠れていた「事象」や相手の考える「課題」が明るみとなるかもしれません。
さいごに
今回は「問題解決の5階層」「傾聴」を紹介しました。前者は「会議」、後者は「コーチング」の文脈で語られていたものですが、多くの場面で活用することができると思います。「会議」も「コーチング」も奥深く、様々なナレッジがありますので、そこから活用できるものを探ってみるのも良いですね。
この記事が、皆さんにとって建設的な「ただ話す」となるように、ほんの僅かでもお役に立てると良いなと願いつつ、今回はこの辺で。